これから海外移住する予定があり、会社の確定拠出年金(Defined Contribution plan / DCプラン)に入っている場合、個人型確定拠出年金(iDeCo / イデコ)の口座を作り、資金を移管する必要があります。
まず、確定拠出年金について解説します。
確定拠出年金とは何か?企業型と個人型があります。
確定拠出年金は英語でDefined Contribution Plan。日本では略してDCプランと呼ばれることもあります。特徴は以下2つ。
- リタイアするまで(2020年6月現時点では60歳)引き出せない。
- 受給資格を得るためには、加入期間が10年以上必要。
企業型確定拠出年金
雇用主が提供する福利厚生で、雇用主によって提供してたり、していなかったりします。
<メリット>
- 雇用主がある程度マッチングして拠出してくれる(例えば、従業員が拠出する金額の3%相当額等。雇用主によってマッチング率は異なる)。雇用主のお金で資産運用ができる!
- 事務手数料は雇用主が負担してくれるケースが多い
- 税引き前給与から天引きされるので節税
なお、雇用されていると厚生年金にも入っています。厚生年金の雇用主マッチングは50%、こちらでも会社のお金を使って資産運用しているので、企業型確定拠出年金にも入っていると2度美味しい仕組みです。
個人型確定拠出年金
個人事業者や主婦等、雇われの身でなく、企業型確定拠出年金に入れない人のためのもの。雇用主が企業型確定拠出年金制度を提供していない場合も入れます。雇用主のマッチングがなく、拠出金全額と事務手数料ともに自己負担です。
以下、海外転出組の知っ得情報 & 手続き
個人型確定拠出年金へ移管後、海外居住者は継続して掛け金を拠出することができません。今口座にある金額を運用するのみとなります。また、口座を開いている限りずっと事務手数料が取られます。
移管にかかる初期コスト
- 移管手数料 およそ4,500円
- 加入時に係る初期手数料(国民基金連合会分) およそ3,000円(無料としているところもあります)
初期コストだけで7,500円という…高い!
1.受付金融機関を決めて個人型確定拠出年金(iDeCo / 以下イデコ)の口座を開く。
企業型確定拠出年金の受付金融機関と異なっていてもOK。同じ受付金融機関にしても、イデコ用の口座を別途開く必要があります。受付金融機関を決めるポイントは以下2点。
①事務手数料(運用指図者手数料)
リタイアするまでずっとかかるコストなので、低い金融機関を選ぶのがベター。金融機関に依りますが、例えばSBI証券の場合66円/月、年間792円取られます。口座から直接引かれるので、事務手数料をカバーできるよう運用します。
②プランや商品のラインアップ
それぞれの受付金融機関が提供できる商品の上限は35本*と決まっていて、私たちはその中から選択するしかありません。興味のある商品を提供している受付金融機関を選びましょう。
なお、既に35本商品が提供されている場合には、新たな商品が提供されることはありません。逆に35本未満の場合、今後斬新的な商品が提供される可能性があります。
*2020年6月現在の情報。上限は政府が決めていますが、決まる前に35本以上提供していた金融機関は、ある一定期間そのまま据え置きできるので、35本以上提供しているところもあります
2.「個人別管理資産移換依頼書」、「個人型年金加入申出書」が届くので、記入して返送。
「個人型確定拠出年金の加入者」または「運用指図者」から選択できますが、海外居住者となる場合、運用指図者にしかなれません。
3.運用商品の選択。
今まで企業型確定拠出年金で運用していた商品はすべて解約、現金化されます。資金移動が完了した時点で、ここで選んだ商品が自動的に買付されます。タイミングを見て買いたい場合には、定期預金を選択しましょう(金額を確定できる)。
また、商品によっては別途手数料が取られることがあります(信託報酬手数料など)。商品を持ち続ける限りずっとかかる手数料なので、低い商品を選ぶのがベター。
手続き開始~資金移管完了までに要する時間は3~4か月ほど。
資金移動の手続きは退職日以降に開始されます。企業型確定拠出年金加入者の資格が喪失されるのは退職日の翌日だからです。なお、移管手数料等初期コストが引かれた後の金額が振り込まれます。
移管手続きできる期間は資格喪失した翌月から6か月以内なので、退職が決まったら早速イデコ口座を開設しましょう。イデコへの移管手続きをしないと、企業型確定拠出年金の口座にあるお金は自動的に国民年金連合会の仮預かり口座へ移管されます。そこでは運用されず手数料が引かれ続けることとなる上、受給資格要件の加入期間に含まれません。
◎海外移住予定でこれから会社の確定拠出年金に入ろうか迷っている人
→入らないほうが良いです!デメリットは以下3つ。
- 事務手数料を払い続けなければならない
- リタイアするまでお金を引き出せない
- 継続して掛け金を拠出できない
【関連記事】
「アメリカの年金システムまとめ – Social Security, 401k, IRA」
以上、これから海外移住予定の方の参考になれば幸いです。